君たちへ

これは、あるクラスのお話です。

そのクラスは、冬、「スマイル大作戦」という学習に取り組んでいました。
今日はその研究授業の日です。
たくさんの人が見に来ています。
あれ?見ている先生達が何か話をしていますよ。
「どうして?どうして3年生なのにここまで出来るの?」
「目がテンだよ、、、」
一生懸命なこのクラスの子供達を見て、みんな驚いていますよ。
そりゃあ そうでしょう。
だってこの子達は、リサーチ、プレゼンテーション、グループやチームの話し合い、
パソコン、コーディネーターと、さらりとやってのけるのですから。
しかもどれも難しいことなのに、みんなまとめてやっちゃうんですからね。
あの後このクラスの担任の先生は、たくさんの先生に質問されていました。
「どのように育ててきたのですか?」
担任の先生は答えます。
「かっこよく言えば、積み重ねと信頼です。
リサーチの時はリサーチ、
プレゼンテーションの時はプレゼンテーションと言うように
一つ一つを大事にしてきました。
それと、国語や算数、理科、社会の力も必要なので、
全ての学習を関連させて(つなげて)取り組んできました。
後はこの子達のことを信じて、待つと言うことでしようか」、と
この全ての学習をつなげながら積み重ねてきたことは、
このクラスの子供達が一番良くわかっていたようですよ。
だってこの一年、このクラスで良く出た言葉が
「あ、つながっている」でしたからね。

でも、担任の先生が他の先生達に伝えたかったのは
「子供達を信じて待つ」ということのようですよ。
担任の先生は知っていたんです。
スマイル大作戦をやるずっと前から、
このクラスの子供達が、
「自分の力で」「自分たちの力で」、
あれこれとやってきたことを。
だから、子供達に任せるし、
待つことが出来たのでしょう。

春が近づく頃、この子達の成長は目に見えてわかるようになりました。
ほら、あのミュージックプレゼンテーションの前の日も。
担任の先生は、転校していく二人のことを話しながら
「離れていても心は一つだと言えるようにならないと!」と、
厳しく言いました。
子供達は感じることがあったのでしょう。
いつの間にか、クラス全員でスクラムを組んで、
かけ声をかけていました。
それを見ていた担任の先生は、一人拍手をおくりました。
そうそう、こんなこともありました。
ある日、クラスの友達が体の調子を崩しました。
その時、このクラスの友達はどうしたと思います?
すぐに動き出して、手助けするんですよ。
一人の友達のために。
「いいんだよ」「大丈夫だよ」
こんな優しい言葉も聞こえてきます。
ね、信じたくなりますよね。こんな姿を見ていると。

スマイル大作戦の後は、熟年者交流や6年生との会食、
そして転校する友達のお別れ会、サッカーなど、
みんなで分担してコーディネートしていきました。
みんな責任を持ってやるんですよね。
担任の先生は「どうだ?」としか聞かないんです。
それしか聞かなくても、自分たちでどんどん進めていくんです。
見事ですよ。まだ3年生なのに。

この子達は、この1年、みんなでそうやってきたことを感じていたのでしょう。
それが形になる日がやってきました。
「心を形に」。。。そう、二人の友達のお別れ会です。
一人一人がカードを渡しながら、
別れの言葉を言います。
担任の先生は、転校する二人と言葉を言う一人ひとりの瞳を見つめています。
みんなの瞳はキラキラと輝いています。
あのダイヤモンドのように。
転校する二人の言葉の後、
リコーダーでカントリーロードの曲をプレゼントしました。
いつしか、みんなの頬にスーッと涙が流れています。
曲が終わった後、先生は転校する二人を抱き上げて言いました。
「良く見ておけよ。この友達を。忘れるんじゃ無いよ」、と。
そして、二人とゆびきりをしました。
「幸せになるんだぞ。自分の力で幸せになるんだぞ。約束な。」
良いですよね。涙を流しても。
だってよわっちぃ涙じゃ無いんですから。
一緒にやってきた心の現れなのですから。
「泣く」ではなく、「泣ける」と言うことは、
人間として素晴らしいことなのですから。

ね、良いクラスでしょう。
このクラスが創ってきた物が、私には見えてきましたよ。
え、私って誰かって?
私は、校舎です。
一年間、このクラスの子供達の息づかいを、
担任の先生と一緒に、ずっと見続けてきた校舎です。
あ、もう一人、見つめに来ましたよ。
ほら、あそこに。
見えますか?
このクラスを包み込む暖かな「春」が。


君たちへ
春がやってきたね。心の春が。
それは、時には形になり、時には形には見えない物。
それは、誰にも暖かくて、
誰もが嬉しくなる物。
君たちが創ってきた物とはこれさ。
「冬は必ず春となる」だね。
さあ、春だ。
さあ、四年生だ。
春は「命」の生まれる季節だよ。。。

                             平成13年3月23日
                             君たちの担任