君たちへ

「お帰り仲間歓迎会」
その日、黒板にこう書かれていた。
転校してきたのに何故「おかえり」なのか?
君たちはこう言ったね。
「前にこの学校にいたから」、と。
全員が支度していたわけではなかったのに、
君たちは「おかえり」と言う。
そして歓迎会の最後には、
一人一人が
「今日からこのクラスの仲間だよ」
「友だちだからね」と口々に言う。
君たちが自分の言葉で転校生に伝える瞳を見ていて
「真心が形になる瞬間」を感じた。
一人を大切にする君たち、素晴らしく思う。
転校生もきっと喜んだだろうね。
いくら前にこの学校にいたとはいえ、
新しいクラスでいろいろ不安もあっただろうからね。
でもそんな不安は必要なかった。
今では最初からこのクラスにいたように
みんなと一緒に頑張っているからね。


「君たちのことはもう信じない。今日でこのクラスは終了ね」

あの日、先生はこう言って君たちを厳しく叱った。
自分をコントロールできなかったこと、
周りが無関心だったこと、何度も同じ事を繰り返したこと、
先生の前では出来ないようなことをしたこと。
これは先生が3年の時から語ってきた事だったね。
だから「君たちのことはもう信じない」と言った。
「先生、もう一度チャンスをください」と、
ある子が涙を流しながら言う。
「もう信じないといっただろう」
「このクラスは強い友情で結ばれているから絶対大丈夫」と、
ある子が涙をこらえながら言う。
「もう君たちに期待はしていない」
「このクラスはみんなで一つ一つを創ってきたんだから、
無くなっちゃうのいやだ」
「もう遅いんだ。
君たちはこのクラスで成長したつもりになっているだけなんだ」
「私は、このクラスでやってきたこと、先生と出会ったこと、
大人になってもずっとずっと忘れない」
「僕も」「私も」
「もう遅いんだと言っているだろう。
今日でこのクラスは終了なんだ」
みんなが泣き崩れる中、
突然ある子が立ち上がり壁に貼ってある文章を読み始めた。
「初めて校庭で君たちと出会ったとき、
君たちは背の高い先生を見上げてニコッて笑顔を見せてくれたね。
「元気で、楽しそうな子供達だな」
先生はあの時、こう思った。
でも、一学期の君たちは、元気なだけじゃなかった。
君たちは、自分の力で考えたり、
みんなでやり遂げようとしたり、
とても3年生では出来ないようなことも
一生懸命に頑張ったよね。。。。。」
いつしか、多くの子が一緒に読み始めた。
負けたよ。まさかそんな手で来るとは。
先生が書いた手紙を泣きながら読まれちゃ心が動いちゃうよ。
君たちは、先生が思う以上にこのクラスを大切にしているんだね。
信じているよ、最初から。
だって、君たちを一番見守ってきたのは先生だからね。
きっと立ち上がってくると信じていたから叱ったんだ。


「命って平等」「命って生きること」
その日、君たちは自分の言葉で
「命って、、、」の考えを書いた。
驚くよ。
命という「確かにあるけれど形になって見えないもの」を
心で感じて、心で書いているんだもんなあ。
君たちの書いた考えが決してかっこつけで
書いているのではない事はよくわかるよ。
だって、4年生の段階で
これほど見事に書けるわけがないからね。
自分リサーチをして自分の成長に気づき、
家族への手紙を書いて
自分の成長は家族の支えがあったことに気づき、
人間以外の命のことで
ディスカッションして命の大切さに気づいたからこそ、
ココまで自分の言葉で書けたんだよね。
「みんな命を持っているから
みんな命が大切なんだと思います」
「もしかしたら人間は他の命を犠牲にしないと
生きていけないのかもしれない、、」
「人間だけじゃない。命あるものみんなだよ」
難しい命の事を、難しいディスカッションで考えを深めていく君たち。
本当に素晴らしく思う。


「音を立てないで静かに掃除しよう」
あの日、君たちは体の調子の悪い先生を気づかってくれたね。
うちわであおいでくれたり、励ましの手紙をくれたり、
先生が学校に来た時、
みんなで創った折り鶴をくれたね。
ありがとう。
すごく嬉しかったよ。
先生までも大切にしてくれる
君たちの心に元気が出てきたよ。


「他に意見はありませんか?」
あの日、先生は1・2組に理科のことで説明に行ったね。
「勝手に進めていて」すぐに戻ってくるつもりで
ちょっと待っていてと言う意味で言ったんだけど、
帰ってきてビックリ。
二人の子が代表して先生の代わりに
授業を進めているんだもんなあ。
段階にテーマをつける難しい学習なのに、
これが結構みんなで活発にやってるじゃん。
みんなずいぶん成長したよね。
3年生のはじめのころにはとても考えられないくらい
見事に成長したよなあ。
自分で判断する君たち。
それは自分を大切にする君たち。
素晴らしく思うよ。


このクラスの君たちへ。

自分の花が咲いたね。
このクラス(だいち)で。
一人を大切にする君という花。
クラスを大切にする君という花。
全ての命を大切にする君という花。
先生までも大切にしてくれる君という花。
そして自分を大切にするという花。
桜はね、根本に水をあげすぎては成長しないんだ。
いつも根本に水があると、桜は遠くまで根を伸ばさなくなる。
遠くまで根を伸ばさないと大きくなった木を支えきれなくて
倒れてしまうそうだ。
大変な事でも命はチャレンジするから成長するという事かな。
君たちは気がついたかい?
春、咲き誇る桜の花のずっと向こうに澄み切った青空があったことを。
青空は上空の高いところで風がビュンビュンと吹いて
雲を吹き飛ばしているから青い空になる。
そして太陽の光にてらされて青く澄みきった空になる。
二学期、心の太陽がこのクラスをてらし出す、、、

                    平成13年7月19日
                    君たちの担任